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Interview | 024限目 「斉藤りえ」学

元筆談ホステスの議員 障がいを通して心の声を聴く女性議員に学んでみた

更新日:2016年1月28日

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Lecture

斉藤りえ Rie Saito

元筆談ホステス 現東京都北区議会議員
~今どう行動するかで未来は変わる~

今回取材させていただいたのは、斉藤りえさん。
今は、東京都北区議会議員として活躍されている斉藤さんですが、以前は筆談ホステスとしても活躍されていたそう。
障がいを持ちながらも様々な分野で活躍する斉藤さんのモチベーションの原点はどこにあるのか…。
実際にお会いすると、とても素敵な方だということが短時間で伝わりました!
「斉藤りえ」学に迫りたいと思います。

関連URL:http://nippongenkikai.jp/member/saito/

 

人の心が聴こえる街に

ー現在どのような思いでどんな活動をしていますか?

昨年の4月より、東京都北区議会議員として活動しております。思いとしては『人の心が聴こえる街に』という言葉を大切にしています。 私は耳が聞こえませんが、言葉だけで思いを理解するのではなく、心の声を聞くよう努めてまいりました。
「どうしてそのようなお話をされているのか」
「なぜそのようにお考えなのか」
と、相手の気持ちに立つことを心がけています。

また、政策を考えるときも、できるだけ当事者の方のご意見を伺ったり、相手の立場に立ったりし て考えるようにしております。例えば、北区議会議員としての活動の一つなのですが、北区役所に、聴覚障がいがお有りの方のために、FAXの設置を提案しました。当然ですが、聴覚障がいがお有りですと電話をすることはできませんので、FAXは重要な連絡方法になってきます。偶然ではあるのでしょうが、夜間に区役所へ連絡する際、FAXで連絡できず、電話でしか連絡を受け付けていない窓口があり、その窓口に聴覚障がいがお有りの方が連絡することもあってお困りのようでした。
区の職員の方も、様々な区民の方からの連絡を想定し対応されていましたが、悪意はなくとも、健常者の方だけで考えるだけでは、想定から漏れてしまうこともあるようでした。
私自身が聴覚障がいがありますので、当事者の方からヒアリングをしているなかで、このような問題点を見つけ、区に対応いただけるよう提案を行いました。このように、相手の立場に立ち、心の声を聴くことがとても大切だと考えております。

ーなぜ政治家を目指すようになったのですか?

障がい者の方々が眠っている能力を開花でき、もっと活躍できるように、そのサポートがしたいと ずっと考えておりました。ターニングポイントは「スワンベーカリー」という、障がいがお有りの方と健常者の方が一緒に働かれているパン屋さんを知ったことでしょうか。障がい者と健常者を分ける必要もないと考えてきましたが、スワンベーカリーはまさに、障がいがお有りの方と健常者の方が一緒に、楽しんでお仕事されておりました。このような活動をもっと広げていきたいと思い、政治家を志しました。
自分自身でスワンベーカリーのようなお店を開くことも考えましたが、ある知り合いの方に『政治家という立場でも、障がいがお有りの方と健常者の方が一緒に活動できる環境を作れる』というアドバイスをいただくことがあり、政治家の道を考えるようになりました。しかし、当時はまだ娘も幼く、立候補を決意することはなかなかできませんでした。
その一方で、東京でのパラリンピック開催が決まり、障がい者スポーツに注目が集まるなか、その気持ちは以前より強まっていました。そんななか、再び知人の議員さんより声をかけていただき、今回は決心いたしました。

ー障がいを通して苦労したことを教えてください。

幸いにも、苦労したとしても、私自身は前向きに考えることができましたので、特に大きな苦労だとは感じてきませんでした。周りの方から見ると、障がいを理由に「無理だ」と思われることも、私にとっては無理だとは思ってきませんでした。幼いころから耳が不自由ではありますが、耳が聞こえないなりに方法はあると思っております。例えば、昔から、私は人と接することが好きで、接客業に就きたいと思っておりましたが、周りの方は『耳が聞こえないと、人と話す仕事は無理だ』と思われておりました。しかし、例えば筆談という方法を使えば、接客業を行うこともできます。もちろん、周りの方のご理解や温かい応援があってこそなのですが、『障がいが有るから無理』と決めつけず、私なりに挑戦してまいりました。政治家になると決めた時も、周りの方には「政治家の仕事は話すことと聞くことだから難しいのでは?」と思われているようでしたが、私は無理だとは思っておりませんでした。今は、北区の議会では音声ソフトを使うことで、議会活動を行うことができています。

難題のない人生は無難な人生、難題の有る人生は有り難い人生

―どのようにモチベーションを保ってきたのですか?

『難題のない人生は無難な人生。難題の有る人生は有り難い人生』。
この言葉は、私を支えてきてくれた言葉です。どんな困難だろうと、それは神様が与えてくださったのかもしれません。
困難にぶつかったときこそ、常に感謝を忘れず、これまでの活動を行えてまいりました。また、周りの方が支えてくれたり、協力してくれたりしたことも、今までモチベーションを保ち続けることができた大きな要因で、大変感謝しております。

―最後に、学生に伝えたいことをお願いします。

まずは簡単なことでもいいでしょう。興味のあることには積極的に取り組んでいただきたいと思います。
経験しないと分からないこともたくさんあります。頭の中で悩んでいるだけでは、何も得ることができません。
行動してはじめて得られることがたくさんあります。特別なこと、大きなことでなくてもいいと思います。まずは始められることから、取り組んでいただきたいです。
また、自分のことだけを考えるのではなく、ご自身の周りの方のお気持ちも考えてみていただきたいと思います。

024限目 「斉藤りえ」学
Presented by 今学びたい100人の学問

 

編集後記

今回、東京都北区まで斉藤議員にお時間を取っていただき取材させていただきました。母が難聴者であることから、私自身この取材をどうしても行いたいと強く願って実現しました。斉藤議員はとてもお美しく、強く、凛とした姿で優しく取材に応じてくださいました。
斉藤議員がなぜ障“がい”者とお書きになられるのか私は取材を通して感銘を受けました。障がいがあるというだけでは、決して害ではありません。むしろどうしてこの字が使われるのでしょうか。斉藤議員もたくさんの障がい者の方々も、はるかに私たちよりつよく、たくましく、やさしく人生を送っていらっしゃると実感しました。『人の心の声を聴く』みなさんはこれができているでしょうか。
私は自分自身足りていないと反省しました。真の意味で相手を認識するには、相手の言葉の裏に隠された真意や表情から相手を思いやり、ともに相手の立場で気持ちや物事を考えることが、これからを生きる私たち学生にとって最も大切なことであると改めて感じました。
そして、『難題のない人生は無難な人生。難題の有る人生は有り難い人生』という言葉通り生きていらっしゃったその背中を見て、私も難題にぶつかった時にこそ行動し、感謝していこうと決めました。迷ったときは簡単なことから、興味があれば積極的に挑戦していこうと決心しました。学生の皆さん。困難こそチャンスです。必ずその先には新しい出会いや光があると信じてみませんか。

2016/1/28
西南学院大学 山口薫

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