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Interview | 069限目「甲斐光輝」学

町一番!カフェの店長に理想の働き方を学んでみた

更新日:2018年4月7日

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Lecture

甲斐 光輝 Hikaru Kai

府内珈琲店長
~Story of Cooking~

1987年生まれ。30歳。大分県出身。地元の高校を卒業後、大好きな料理をするために調理師の専門学校に入学するも、4か月で中退。様々な仕事を転々としたのち、偶然の出会いがきっかけで現在の会社に入社し、2店舗の店長を任されている。20歳で結婚し、現在は妻と三人の子供とともに自然豊かな田舎暮らしを楽しんでいる。

 

職を転々とした日々

ー現在の職に就くまでの経緯を教えていただけますか?

 高校は地元の工業高校に通ってました。本当は高校に通う気はあまりなかったんだけど、とりあえず工業系の高校に行っとけ!みたいな(笑)。卒業後は料理の仕事がしたいという思いがあったので、調理の専門学校に進学しました。進学から少し経つと、父親の仕事の都合もあって、専門学校に通い続けるか悩み始めました。そこで、専門学校の先生に、「この学校を出たら何かメリットがありますか。」と聞いたところ、調理師資格がもらえるとの答えをいただきました。だけど、調理師資格なくても料理できるし専門学校に行かなくても取れるじゃん、と思ったのですぐ辞めました(笑)。そのあとは、ちょっとニートしてアクセサリーショップで働き始めました。同時期にバーテンダーもやってて、朝11時から次の日の朝7時まで毎日働いていたのですが、20歳目前になり、体力的にもきついし、親も心配してるし、そろそろ潮時かなってことで辞めました。その後に警備員、うどん屋さん、蕎麦屋さんと仕事を転々としていたのですが、気に入った仕事が見つからず悶々としていました。そんななかで、偶然イタリアントマトの店長と知り合い、その伝手で、府内珈琲がオープンしたタイミングで店長になりました。

ーどんな学生でしたか?

 いわゆる、スネ夫系でした(笑)。明るいグループには居たけど、特段目立ってるわけでもない世渡り上手な感じ。学校にはちゃんと通ってたけど、朝から晩までコンビニの前で暇をつぶすような高校生活でした(笑)。専門学校の時は、男ならなんとかなるだろうの精神で辞めちゃいました(笑)。

地元で愛されるワケ

ーお店を経営する上で気を付けていることを教えてください。

 コンセプトをぶらさないことを気を付けています。うちのコンセプトはおいしいものを安く出して、お客様に足繁く通っていただくことです。この店は改装前から数えると20年近く建っていて、そのころからの常連さんもいます。そういった方々が毎日使っていただけるように、価格設定と居心地の良さで勝負しています。メニューに関しては、僕が考えたものをスタッフたちが試行錯誤しながら完成度をあげてくれています。手作りでほかのお店がまねできないようなものを出すことを意識しています。うちのお店は二階席があるんですけど、ちょっとしたいい雰囲気の空間になってて、この辺りでは一番おしゃれだと思います(笑)。

ーこれからの展望があればおしえてください。

 最近のカフェはどこも厳しいなと感じています。少し前のカフェブームで、コンビニ各社がコーヒーに力を入れだしてて、100円で十分おいしいコーヒーが飲める時代になってしまいました。だから、いかに安くおいしいものを出せるかということに焦点を当てて、やっていこうかなと思っています。今の飲食業界はめちゃくちゃ安くするか、めちゃくちゃいいものを出すかの二極化が進んでいて、この店はその中間層に位置しています。地元の性格に合わせて、少し安めの価格設定で頻繁に来ていただける店づくりを目指してます。

料理にもストーリーを

ーここのコーヒーはほかの店と比べて味が濃く香りも強いですよね。なにかこだわりがあるんですか?

 うちではイタリア直輸入のナポリの豆をエスプレッソ風味で抽出してお出ししています。日本ではイリーという種類の豆が多いので、あまり馴染みがない味だと思います。大分県で飲めるお店は片手で数えられるほど。なぜうちはナポリコーヒーをお出ししているかというと、本場イタリアでは食後に濃いエスプレッソを飲む習慣があります。でも、日本で出されるコーヒーは薄味。だから、日本のイタリアンはおいしいけど料理の締めがないと、外国から来られた方はよく言うそうです。そこで、うちではおいしいイタリアンにおいしいイタリアの濃いコーヒーを出して、料理にストーリーをつくろうということで、特色を出しています。

嫌いなことでもちゃんとする

ー学生に向けてアドバイスをお願いします。

 好きなことをやり続けられることが一番いいけど、好きな仕事の中にも嫌いな仕事は必ず出てくると思います。例えば、僕は料理の仕事は好きですが、計数管理の仕事なんかは苦手です。でも、僕は店長という立場だから両方の仕事をする必要があります。嫌いなことでもちゃんとできるのが、かっこいい大人だと思います。「俺はそうじゃないんすよ!」「これがしたいんですよ!」って言うだけじゃなくて、実際に動いてみないと何もわからない。嫌なことを率先してやると、自分の力になるのかなとも思います。かっこいいし(笑)。

069限目「甲斐光輝」学
Presented by 今学びたい100人の学問

 

編集後記

 甲斐さんからいろいろな話を聞いていく中で、通い慣れたお店の料理に、こんなストーリーがあったのかと新鮮な気持ちになりました。お店のコンセプトを保ちつつも、お客さんのことを考えて柔軟な店づくりをされている姿勢に、地域で長年愛され続けている理由がわかりました。くだけた雰囲気もありながら芯の通ったお話を聞かせていただき、とても楽しく取材をすることができました。ありがとうございました!
2017.9.5
九州産業大学 仲道素生

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