Interview | 029限目「堀口 悟」学
地域の魅力、宝物を見つける 地方創生を支えるコンサルタントに学んでみた
更新日:2016年11月24日
Lecture
堀口悟 Satoru Horiguchi
ランドブレイン株式会社 福岡事務所 地域活性化コンサルタント
~いつまでも、地域の黒子~
最近、話題となっている“地域創生”。
堀口さんはその”地域創生”に、リアルな現場で関わっていらっしゃる方です。
地域のために黒子になって働く堀口さんに伺ってみました。
九州の地方都市
―堀口さんの所属する会社はどんな活動をしていらっしゃいますか?
まず所属している会社がどんな会社かと言うと、地域活性化のコンサルティングを生業としています。
クライアントは行政だけど、真のクライアントは地域に住む人。
地域が困っていることを聞き出して、課題解決の方法を考え提案することがお仕事です。
いま、九州の地方都市や農山漁村には、実はいろんな困った問題があるんだよね。
例えば、中心市街地に空き店舗、集落に空き家が増えているとか、山村の農家や離島の漁師に後継ぎがいないとか、集落の半数以上が高齢者で、地域の清掃や祭りが維持できないとか。
そんなとき、問題や課題を整理し、10年後の地域のためにプランを立てる。
そのプランの実現に向けて、一歩目のアクションを踏み出せるようなお手伝いをする。
地域に住む人と、一緒に考えながら走る、まさに伴走型のコンサル。
また、別の角度でいうと、そんな地方の現場で培った経験を活かして、地域を元気にする。
地域発の面白い取り組みを、国の各省庁に伝えることや、それらをもとに国に対して政策・施策の提言を行う機会もあるんだよね。
―堀口さんはどんな活動をしていますか?
福岡県田川郡に川崎町というまちがあるんだけど、「かわさきパン博」って、聞いたことないかな?
川崎町は、「パンでまちおこし」をがんばっているまち。
ちょうどいま、そのまちで「地域おこし協力隊」の募集支援をしてます。
「地域おこし協力隊」とは、総務省の過疎対策室というところが行っている制度です。
都市に住むスキルを持った人が、過疎地域に移住し、地域の課題解決を担うというもの。
実際に川崎町では、観光協会や農産物直売所・町役場に着任してします。
そして、観光交流事業の企画・運営や、売上アップに向けた直売所の改善、町外への新たな観光情報の発信などを行っていく予定だね。
先日は東京で募集活動をしてきたよ、ブースに「パン」をぶら下げてね。(笑)
―ご自身でも地域の歴史の勉強をされるのですか?
やっぱり地域の歴史なのかな。
それと、ひと。
人口減少が進む社会のなかで、時代は地域同士の勝負になってきた。
「そこにしかないもの」を突き詰めていくと、歴史にたどり着く。
B級グルメとか、ゆるキャラ、○○サイダーみたいな流行りものじゃなくて、地域の価値の本質を、地域のみんなで見つめ直す作業が、大事なのかなって。
また、元気な地域には、必ずといっていいほど、元気な女性がいるんだよ。
川崎町の近くにある赤村にも、特産物センターの女性加工グループAKB68(AK: あかの B: ばっちゃんorべっぴん 68: 平均年齢68歳)があって、注文があったら、深夜/早朝を問わず、弁当や総菜を一所懸命に作ってる。
「頼まれたら、絶対イヤとは言わない」が、代表の中原さんの口ぐせ。
僕らにしか味わえない幸せ
―すごくやりがいを感じれそうなお仕事ですね!
この仕事をやっていて、あぁうれしいな!って思う瞬間があってね。
お仕事を通じて、いろんな地域のお母さん方とつながりができて、赤村のAKB68のお餅と、熊本河内のおに嫁みかんで、年が越せたとき。
これって、僕らにしか味わうことができんのかなって。
その人の顔が浮かぶからね、そのものの先に。
つながりを感じられることって、本当に豊かで幸せなこと。
ずっと思っていたら、できる。
―今の活動をするに至ったキッカケとは何だったのですか?
僕は地元が岐阜で、名古屋の大学で土木を専攻してて、まちづくり系、詳しくは交通計画の研究室にいたのね。
主には、公共交通を研究するようなところに。
でもね、実は小学生のころからの夢は、「旅行会社」で働くことだった。
旅行が大好きだったから、ツアーの企画がしたかった。
学生の時にOB・OG訪問で、旅行会社の先輩に5人くらい話を聞きに行ったのね。
「旅行会社やめたほうがいいよ」とだれもがオススメしてくれなくて。
「ツアーのプランニングができるのは、ほんの一握りだからね」
「給料低いよ」
「クレーム多くて、大変だから」
と言われて「こんなつらいんだ旅行会社は!」と思ってあきらめた。
それで、研究室の先生から、学校推薦をもらって、ハード系のまちづくりコンサルを受けにいったんだけど、学校推薦をもらった人が15人くらいいて、採用枠はたったのひとつ。
それで落ちてね、もう自暴自棄になってさ。
夏に大学院の試験を受けたんだけど、それも落ちたんよ。
自分のなかで、動機がはっきりしてなかったから、全然勉強してなかった。
途方に暮れてた矢先、遅い遅い秋の面接で、いまの会社に拾ってもらったの。
社長に面接の場で、
「希望する名古屋事務所は人が足りてるから、九州なら採用するけどどう?」
「まちづくりの技術者としては能力が足りない。営業マンだけどいいか?」って。
でも、選択の余地がなかったから、「わかりました」って。
会社に入れたこと以外、希望が叶わないまま、初めての土地福岡に。
気がつけば、九州で結婚して、技術者としての仕事もさせてもらえてる。
また、小学生のころからの夢が、実はいま叶っているの。
まちづくりの面から、地域の観光に携われているんだよ。
消費者側の旅行会社が考える観光より、地域側の魅力を見出して、伝えていく観光の方が、よっぽど面白い。
ずっと思っていたら、できるんだなって。
覚悟を決めて、会社に入ってよかったなぁって、いまになってじんわり思ってる。
―大学に入るときから、まちづくりがしたかったのですか?
いやー、そういうわけじゃないんだけど。振り返ると、あんまり考えてなかったのかも。
でもね、無駄なことって、ひとつもないと思うよ。
できることは、いまある環境を精一杯楽しむこと!
つまらんって嘆くより、できることにフォーカスしたいよね。
そうすると結果として、やりたいことができるようになるっちゃないかな。
求められるのは学生の若いエネルギーとや新しい切り口の発想
―最後に学生に向けてメッセージをお願いします!
地域はいま、学生の若いエネルギーとか、新しい切り口の発想を求めてる。
僕らは、地域活性化の専門家として地域に提案するけど、学生だってある意味「プロ」なんだと思う。
地域を知らないからこそ、若いからこそ、女性だからこそ、農業を知らないからこそ、しがらみに囚われない斬新な発想ができる。
地域の魅力に、地域の宝物に、気がつけたりする。
それが強みなんだと思う。
それが、地域活性化の突破口になる可能性がある。
学生にとっても、地域での経験は、学校では学べないからこそ、就職活動などに役に立つと思う。
だから、積極的に地域に飛び出してもらいたいなぁ。
また、いつか地域活性化コンサルタントという職業が、大学生にも、さらには子どもたちにも、認知される職業になるとうれしいな、と思ってます。
029限目「堀口 悟」学
Presented by 今学びたい100人の学問
編集後記
地方創生に関わっていらっしゃる堀口さんのお話から、そのリアルに迫ることが出来て貴重な経験となりました。
九州かーちゃんサミット や、 AKB68のお話など、各地域で活躍していらっしゃる方々のお話も伺うことができ、自分もプロの学生として何かしたいと考えるようになりました。
堀口さんの優しい口調の、九州各地の方言の混ざった言葉が、堀口さんの努力の結晶だと感じました。
お忙しい中、時間を取っていただきありがとうございました。
2016/2/12
九州大学 金子雄仁
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