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Interview | 012限目 「山内省二」学 

文学の魅力を伝える 志士を育てる高校教師に学んでみた

更新日:2015年6月20日

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Lecture

山内省二 Shoji Yamauchi

福岡県立嘉穂高等学校教諭
~真の日本人であれ~

何のために学校の先生となるのか?

そんな質問の答えを見つけるヒントになる記事かもしれません。

今回インタビューをさせていただいたのは、福岡県立嘉穂高等学校の国語科、山内省二先生です。
今回インタビュアー、金子は教育の分野に非常に興味を持っているのですが、山内先生は私の高校時代にそんなきっかけを作ってくださった先生です。

【将来教師を目指している方】には必見の記事です。

 

文学の面白さを伝えたい

ー教師になったきっかけはなんですか?

「教員免許を持っていたから、教員にでもなろうかなと思っていました。
学生時代に塾で教える経験をしたことがあって、教える面白さというのは感じていました。

子供が好きだったし、文学が好きだったので、その面白さが伝えられればいい、そんな程度に捉えていたんです。
ところが、実際に教員になり、特に担任として生徒を持つようになってみると、子供たちが「先生!先生!」と頼ってくるようになりました。

自分みたいにくだらない人間を「先生」と言われると、「自分は何をしているんだ」って恥ずかしく感じるようになって…。
それ以来、本格的に教員としての自覚が芽生え本気で勉強に取り組み始めました。」


「”親”と”先生”の違いって何でしょう?」

これはインタビュー中に、私が先生から逆に尋ねられた質問です。この質問に対する答えが浮かばなかった私は、先生に問い返してみました。

対集団か対個人か

ー”親”と”先生”の違いとはなんですか?

「親の年齢と子供の年齢は同じです。大人は、子供が生まれると同時に親になります。
先生も同じような関係で、生徒がいて初めて先生になります。そういった意味ではとても似通っていますが、決定的に異なる点が1つだけあります。

それは、「対集団か対個人か」です。
親や家庭教師というのは対個人なので、その子だけに合わせた教育が出来ます。

その一方、学校の先生は対集団となるため、どうしても子ども達の平均をとってしまいます。また、周りと比較する”相対評価”に偏ってしまいがちになります。そうすると、トップ層は慢心してしまい下位層はおちこぼれてしまいます。それを避けるために、私は、その子だけの成績を評価する”絶対評価”を用います。

一人ひとりの性格や交友関係、得意不得意など、個人情報を把握しておいて密に関わっていくんです。絶対評価を上げていくことで相対評価も上がっていく、だからこそ集団という観点を忘れてはいけないのです。」

ー先生の役割とはなんですか?

「“どういう人材を育てるか”という発想で考えています。
最高と最低限の考え方でマトリクスを用いて考えます(以下写真参照)。

「社会-個人」と「貢献する-迷惑をかけない」という観点で、生徒に接するようにしています。

しかし、社会貢献など世に取り上げられることが全てではないので、例えば家庭で家事をこなすなど、どんな規模でも「その人なりの貢献」が出来ていればよいと思っています。逆に、世の中に迷惑をかけないように最低限のレベルで生徒を怒ることもあるし、もっと貢献してほしい場合にも怒ることもあります。

社会的に立派な選択or行動であっても、それが生徒の負担や悩みとなっている場合もあるんです。こういう時は、個人の声に何度も耳を傾け、「その子にとって最高の状態」を共に目指していくのが理想ですね。

「先生と親との違い」の話にも関連してくるのですが、このマトリクス上に生徒は必ずいて、先生は集団の観点で物事を見ることが出来るからこそ社会に必要とされるのです。逆に、親は自分の子供だけを見てしまいます。これが『親』と『先生』の大きな違いです。

実際にそれが分かるのは教育実習の時でしょう。授業中に生徒が先生の方を2割向いていたらその授業は成功と思っていいです。学校によってはもっと苦労することもあります。

集団の観点で覚えておいてほしいのは「2対6対2」という法則です。人間の集団は2割が前向きに取り組み、6割が中間層、そして後ろ向きなのが2割と言われています。どんな授業でも自分の方を向いている生徒は2割いるので、その自分の方を向いている2割の生徒が浮かないようにするのが大事です。そして、中間層の6割を、前向きな2割の味方にして、”前向き+中間層8割” 対 ”後ろ向き2割”という前向き優位の巨大集団を作るんです。

この集団の法則を知っていれば簡単に集団をまとめることが出来るのです。」



私金子は将来英語科の教師として、外国語を使ってコミュニケーションが取れることの楽しさ、また英語自体を面白いとか楽しいと生徒に感じてほしいと思っています。先輩教師である山内先生は国語科教師としてどういったことを教えていらっしゃるのか尋ねてみました。

ー教科を通じて教えたいことはなんですか?

「我々は日本人であり、日本語を知らなければそれだけ人生損をします。日本人であることからは逃れられないし、その基礎になることを我々はやっています。日本語を知らないということはそれだけ我々の人間性が低くなっているということです。さらに、敬語を知らないということはコミュニケーションが出来ないということなので、社会に迷惑をかけることにもなります。

しかし逆に言えば、日本語能力を磨けば社会貢献もできるようになるということです。明治時代の偉人が辞書も何もない状態からあれだけ国際的に活躍できたのだから、日本語を磨くことで得るものは大きいはずです。」



インタビューの最後に先生から大学生に向けてアドバイスをいただきました。

”今しかできないこと”をとことんやってほしい

ー大学生に向けての一言お願いします!

「とにかく大学生活を満喫してほしいです。

大学生活は1度しかないので、遊ぶならとことん遊びつくして、学問に目覚めたなら学問にとことん取り組んでほしいですね。学問に取り組むことが道楽になれば最高ではあるのですが、取り組みたい学問が見つからなければ、やりたいことをとことんやってほしいです。

社会人になると、仕事は責任が伴い好きなことが出来なくなります。だからこそ、煙草やパチンコなどではなく、”今しかできないこと”をとことんやってほしい。そうすれば、社会人になったときに切り替えて働き始めることできると思います。」

012限目 「山内省二」学 
Presented by 今学びたい100人の学問

 

編集後記

今回取材させていただいた山内先生は、私の高校時代に国語科を担当していただき、私が教師を志すきっかけとなった先生です。私の高校時代から教科の知識だけに限らず、教育心理など幅広い知識を持っていらっしゃる私の憧れの先生です。そんな先生を知っているからこそ、教師という職業につくためには相当な覚悟が必要だと思っています。この記事を通じて、将来教師を目指している方が何か学んでいただければ幸いです。

2015/6/13
九州大学 金子雄仁

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