Interview | 016限目 「坂本剛」学
大手メーカーを2年で退職 大学発ベンチャーを支援する投資家に学んでみた
更新日:2015年9月14日
Lecture
坂本剛 Tsuyoshi Sakamoto
QBキャピタル合同会社 代表社員
~さりげなくダイナミック~
「無駄なことは何もなかった。今振り返ると全部つながっていた。」
福岡の観光地である福岡タワー、ヤフオク!ドームが立ち並ぶ百道浜。その百道浜に今回伺ったQBキャピタル合同会社のオフィスはあった。代表社員である坂本剛さんが16限目の学問の「人」である。大学発ベンチャーを支援したいという想いからファンドを立ち上げ、新事業の創出、世界に目を向けたイノベーションの創出を目標としている。様々な経験を通してわかった自分の強みである「産学連携」の分野で活躍されている坂本さんに迫りたいと思う。
関連URL:https://www.jst.go.jp/start/jigyo_p/qbc.html
無駄なことは何もなかった。今振り返ると全部つながっていた。
ー現在はどのようなお仕事をされているのですか?
「私たちの会社では九州の大学発ベンチャーを支援するためのファンドを今回立ち上げました。バイオ、医療機器、ナノテクノロジー、情報通信など大学の技術に強みがある分野の新規事業の創業に対し投資を行うことがファンドの目的です。私たちのように大学発ベンチャーに特化しているファンドは、九州、中四国を含めて第1号なのでまさにこれからという段階です。」
大学を卒業したときには、まさか投資家になるなんて考えてもなかったと笑いながら話す坂本さん。そんな坂本さんのこれまでを振り返りたいと思う。
ー坂本さんのこれまでの経歴を教えてください。
「小さい頃から人の前に立つことが好きで、学級委員・生徒会長のような役割はいつもやっていました。中高ではバンドをやり、今振り返るとバンド活動を通して人生の中での自分のマインドが定着したのではないかと思います。そのころの仲間には音楽業界で現在活躍している仲間もいるし、同じ時期に活躍したグル―プには藤井フミヤさんもいました。とても刺激的で、そのような環境が安定という概念をなくしたのかもしれません。一方、ずっと同じ会社で働くサラリーマンには向いてないとそのころから感じていました。大学は九州大学の工学部(生産機械工学科)に入学しました。なんとなく理系が好きだったし、機械系だとつぶしが効くかな~とそう思っただけです(笑)就活は二転三転ありましたが大手メーカーに就職しました。」
「大手メーカーに就職が決まったものの、2年で退職しました。メーカーでは開発や設計の仕事ができると思っていたのですが、いざ入ってみると生産現場に近い職場に配属されました。私自身、何か違うな~という感覚は非常に大切だと思います。そのように感じたときや、きついと思ったときはキャリアをチェンジすることも一つの選択肢だと思います。日本人は”石の上にも3年”という言葉があるように、我慢することが大事だという考えがありますが、我慢し続けて身体的・精神的に壊れてしまったらそちらの方が大変になりますから。
その後は大手企業、ベンチャー企業、中小企業を経験し、大学の産学連携組織で大学発ベンチャーの支援の仕事に従事、様々な業務や人との繋がりを創りました。特に7年間働いた中小企業では新規事業と経営に近いマネジメントを担当したのですが、その経験が今の仕事に活かせています。エンジニアやマネジメントの経験を通して、40歳を過ぎて初めて自分の強みは「産学連携」だということに気づきました。何かやりたいことを決めて行動することも当然大事ですが、なんとなくという感覚でも一生懸命取り組めば、無駄なことなんてないんだと思いますよ。」
40歳を過ぎて自分の強みがわかったという坂本さん。僕も含めて将来やりたいことが明確に決まっておらず、不安も抱いている学生も多いはず。坂本さんは、それは当たり前だと言う。
ー今後のキャリアを考えていくうえで大切なことはなんですか?
「就活で言うと、情報が偏在し過ぎていてわからないことばかりですよね。実際に入ってみないとわからないことだらけ。だから自分の高校生の娘には、実際に大学のキャンパスに連れていったり、実際にいろんな人に会せたりしています。2次情報ではなくて、実際に社員と話したりする1次情報が大切だと思います。
ただ、人にはそれぞれの意見・考え方があるので、単に鵜呑みにするのではなくて、聞いた後で自分自身で考えて整理する必要があります。将来やりたい職業を決めることに関しては、もしかするとやりたいことを探すこと自体にリスクがあるのかもしれません。昔の有名な銀行の名前を今の若者が知らないように、10年後20年後にはなくなってしまう会社や、職業自体がなくなってしまう可能性だってあるのです。まあ、将来を考える力を身につけるには経験することが大切なので、学生のうちにやれることを思う存分やって楽しむしかないと思いますよ。」
将来やりたいことを必死に探していた僕にとっては少し衝撃的だった。たしかにアメリカなどではIT化に伴い、今後20年で702業種ある職業のうちの約半分がなくなるとまで言われている。013限目の中澤さんとも少しつながるが、職業やスキルなどの前にマインドの部分を鍛えておく必要があると切実に感じた。
では最後に学生に伝えたいことを聞いてみた。
無駄なことは一つもありません
ー学生に伝えたいことを教えてください。
「一生懸命に考えて悩んで出した答えに間違いはありません。僕自身もこれまでやりたいことのために走ってきたわけではなく、なんとなくやってきた部分が多かったけど、今考えたら全部つながっていました。なんとなくやってみて、そのあと自分で考えて整理・調整するという方針でいろんなことにチャレンジするのもいいかもしれません。あとは、情報発信することは大事ですし、仲間も大事にしなければなりません。私も中高時代の仲間がいろんな業界で頑張っている姿に刺激を受けて今回もチャレンジできました。無駄なことは一つもありませんのでいろんなことにチャレンジしてみてください。」
016限目 「坂本剛」学
Presented by 今学びたい100人の学問
編集後記
「産学連携」と聞くと、なじみのない方も多いと思いますし、僕もそうでした。しかし、今回坂本さんの話を聞いてとても可能性のある分野だと思いました。今までは大学発ベンチャーのファンドを創る“べき”だ、という声は多くあったそうですが、九州・中四国では今回が第1号。坂本さんは創り“たい”という思いで行動に移せているので本当に尊敬しています。今後のQBキャピタル合同会社の今後の活躍を心から期待しています!お忙しい中ありがとうございました!
2015/9/14
九州大学 松口健司
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