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Interview | 005限目「森山円香」学

「選択」を「正解」にする方法とは 教育に踏み込む女性に学んでみた

更新日:2015年4月23日

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Lecture

森山円香 Madoka Moriyama

認定NPO法人Teach For Japan 九州支社設立
~「選択」を「正解」に!~

笑顔が素敵で一見普通の女性だが、教員養成の仕組みに疑問を持ち、認定NPO法人Teach For Japan(以下TFJ)の九州事業部を九州大学在学中に立ち上げた行動力とパワーの持ち主だ。

迷うこともたくさんあるかもしれない。この選択でよかったのかと不安に思うこともあるかもしれない。
だけど、自分が『選択』した道を『正解』にすることはできる。自分が『これだ!』と思った道に自信を持って、正しい選択だったと思えるように行動することが本当に大事なことだよ。

 

『魚の釣り方』を教えることができる人になりたい

私の森山さんに対する第一印象は、
自分の目標に向かってまっすぐ進むパワーを持った人。
しかし、大学入学したてのころは教育に関心があったわけでもなく、サークルを楽しんで授業もそれなりにこなす「THE大学生」だったそう。森山さんは法学部出身だが、その学部を選んだのも「つぶしが効く」「弁護士ってかっこいい」という軽い気持ちからだった。

そんな森山さんに「教育」というキーワードをインプットし、考え方を変えたのは、ある本との出会いだった。

「岩本悠さんの『流学日記』という本を読んで衝撃を受けた。筆者は大学を休学して世界を旅していて、この本はそこでの学びをつづった本。当時、自分と同じくらいの年齢でこんなことをしている人もいるのだと衝撃を受けたし、単なる旅行記ではなくて、旅行先での経験から生き方や自然の摂理に踏み込んでいく深さにとても感化された」

「筆者は困っている人に魚自体を与えるのではなく、『魚の釣り方』を教えることができる人になりたいと言って教育の道に進んだ人。この本と出会って自分の中に『教育』という言葉がキーワードとして頭に残った。」

『やればできる』と感じてほしくて子ども達と一緒に頑張った

その後、森山さんは中学社会と高校の地歴公民の教職課程を履修したが、
「教育に関心がある=教師、という構図しか見えていないのではないか?」
「”社会”を知らない”社会”の先生になってしまうのでは?」
と、感じ始めていた。

また、座学中心の授業と教育実習期間の短さから、教員養成の仕組み自体にも疑問を抱くようになった。
そこで「1回現場に出てみたら」という周りの後押しや、「流学日記」の影響もあり、大学を休学して島根県隠岐郡の海士町に移住した。

その中で教育が持つ力や、子ども間の環境の違いに触れた。
特に、中学生の受験対策を任されたときのことが印象に残っているそうだ。

「子ども達の中には『どうせ自分はバカだから』とあきらめている子がいたり、親の中にも『進学できなかったら働かせればいい』と考えている人もいたり。自分にとっては衝撃だった。だからこそ、『やればできる』と感じてほしくて子ども達と一緒に頑張った。
その結果全員が高校に合格できた。合格を喜ぶと同時に、『周りからの期待を感じられずにいる子ども達は彼ら彼女ら以外にもたくさんいるのではないか。』と感じた。」

           

その後大学に復帰した森山さんは、海士町で自分の課題意識に全力で向き合っている大人たちとの出会いを受けて、
自分もそのように生きたい、では自分の課題意識とは何だろう、と考えながら日々を過ごしていた。

そんな矢先、TFJの存在を知り、その理念に共感した。
森山さんがTFJのことを知ったのは、大学4年生の12月、TFJの松田代表のブログを読んだことがきっかけだった。

プロデュースできる人間になる

*TFJは、全ての子ども達が環境や経済状況に左右されることなく、素晴らしい教育を受けられる社会の実現を目指した認定NPO法人であり、その実現のために意欲ある若者を選抜し、指導力のある教師そして社会のリーダーとなるための育成・支援を主に行っている。

            

短期目標としては、2年間の教員生活の中で、子ども達の学力保証を行う。
中期目標としては、蓄積したノウハウを元に、学校現場や教育委員会への情報提供を行うことで貢献していく。
そして長期目標として、TFJで育った教師たちが学校現場や様々なところに羽ばたき、リーダーとなり、社会全体で教育を支える。

「このような松田代表の考えが自分の中でビビっときた。地方にこそ、この仕組みが必要だと思い松田代表に会いに東京へ行きました。」

そこで松田代表に「それなら君が地方でつくればいい」と言われ、九州事業部の立ち上げを決意したそう。
幸い先に東京でノウハウが確立していたし、周りの助けもあって大学在学中に九州事業部を立ち上げることができた。

            

「やればやるほど現実が見えてくる。短期的には子ども達の成長が見えたり、やりがいを感じられたりするけど、本当にこの活動が持続可能なものなのかとか、心配なところも見える。でも、現実が見えるということはネガティブなことじゃなくて、やったからこそ見えたことだし、私はそれがダメなことだとは思ってないよ。」

そんな森山さんの今の目標は、「プロデュースできる人間になる」こと。

「日本に帰ってきたら、教育を軸に持続可能なまちづくりに携わって自分の手の届く範囲、顔の見える場所を一つずつ良くしていきたい。その場所の資源、可能性を追求しながら必要なリソースを集めたり生み出したりできる『プロデュースする力』をつけたいと思っています。」

            

森山さんは2015年秋からヨーロッパに留学することが決まっている。
最後に森山さんが大学生に伝えたいことについてお聞きした。

『選択』を『正解』にすること。

自分が直感でいいと思ったり、わくわくしたりすることを選んで、自分でその道に進んでよかったと思えるように行動することが大切。」

何が人に響くか分からないし、人は動かそうと思って動くものじゃない。

一人一人響くものが違うのだから、『数撃ちゃ当たる』ではないけど、

いろいろな『本物』に出会うことが大事だよ。」

005限目「森山円香」学
Presented by 今学びたい100人の学問

 

編集後記

今回、私がこの春に知り合いお世話になった森山さんにお話を伺いました!初のスカイプでのインタビューということで、多少やりづらい点もあったとは思いますが、快く引き受けて下さった森山さんにはとても感謝しております。
森山さんはまだお若いのにいつもパワフルで魅力的な人だなと思っていたのですが、今回のインタビューで、それは「選択」を「正解」にするために自ら行動しているからこそ感じられる魅力なのだと感じました。
現在も留学して「プロデュースできる人間になる」という目標に向かっている森山さんは、とてもキラキラしていると感じました(^^)
私もこれから選択を迫られることばかりだと思いますが、どんな選択をした時も「これでよかった」と思えるように頑張っていきたいです!
最後に、お忙しい中快くインタビューを引き受けて下さった森山さん、本当にありがとうございました!

2015/4/23
九州大学 藤田由起

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